為替デリバティブの問題点・危険性

 

取引銀行の担当者の言うことだからと、為替デリバティブ取引の内容がよく分からないまま契約してしまい、その後の円高になってしまうと毎月多額の損害金が発生し、倒産危機に追い込まれるというケースがあります。

 

実は、このような為替デリバティブ取引には、商品内容自体が、銀行側に比べて企業側に著しく不利な内容に設計されているものが多く、上記のような事態は起こるべくして起こるともいえます。

 

 

1 商品内容自体の問題点

 

為替デリバティブ取引の中でも、例えば近年問題となることの多い通貨オプション取引では、ゼロコストにするという銀行担当者の触れ込みで、顧客企業が、ドルコール円プットオプションを買い、同時にドルプット円コールオプションを売るというようなことが多く行われているといわれています(通貨の組み合わせ等は様々です。)。

 

このような取引では、円高ドル安になった場合には、顧客企業は損をすることになるドルコール円プットオプションを放棄してプレミアムを支払い、また銀行に対して不利なレートでドルを買って円を売る損失を被る一方で、逆に円安ドル高になれば顧客企業側が銀行から同様の利益を得ることになりますから、為替変動を対象に顧客企業と銀行とがギャンブルをしているのと同じような構図になってしまっています。

 

これだけでも危険な内容ですが、さらに、このような取引には様々な特約が付けられています。

 

例えば、銀行側に不利になる円安ドル高の場合には、一定のレートに達すると、一定の金額以上は銀行が支払わなくてもよいようになっているもの(バイナリーオプション)や、契約が終了するようになっているもの(ノックアウト特約)があるのに対して、顧客企業側が不利になる円高ドル安の場合にはそのような特約はなく、逆に中途解約しようとすると莫大な解約金が発生する仕組みになって、取引期間中は莫大な損失(銀行にとって利益)が出るようになっているものがあります。

 

そのうえ、レシオが2~3倍に設定されて、円高ドル安になった時にだけ顧客企業側が2~3倍の損失(銀行にとって利益)がでるようになっているなど、複雑な特約によって顧客企業側に著しく不利な内容の取引となっているものがあります。

 

2 適合性原則違反、説明義務違反

 

上記のような内容の金融商品は、為替リスクをヘッジ(回避)するためという説明で販売されているものが多くありますが、実際には外貨建てによる商品の直接輸入などは行っておらず、当該金融商品の購入によって為替リスクのヘッジにもならないような業態の企業にも、大量に販売されているという問題があります。

 

そのうえ、前述のように、銀行側に著しく有利に設計され、円高時にはレシオによって何倍もの損失に膨らむようになっているのですから、きわめて危険性の高い商品です。

 

このような危険性の高い商品については、本来、十分な知識と経験があり、為替動向に対する分析や対応が十分可能な専門家を擁する企業に対してのみ販売されるべきものといえますが、一般の中小企業にはそのような能力など期待できません。為替リスクのヘッジの目的に合わない金融商品は、基本的に一般の中小企業には販売するべきではないといえるでしょう。

 

また販売する際にも、リスクの高い不利な内容の金融商品であることについて、十分説明をしなければならないものといえますが、実際にはそのような十分な配慮がなされていないものも多く見られるという問題があります。

 

このように為替デリバティブ取引には、様々な問題点があるわけですから、企業の皆様は、法的にも保護されてしかるべきであり、一度契約をしてしまったからと倒産危機にまで追い込まれなければならない筋合いなどないでしょう。

 

 

Contents.

解決方法・救済策

ご利用方法 Q&A

法律相談 お問い合わせ


 

弁護士相談Space でご予約いただければ、法律相談料は 5000円 / 30分(税別) です

 法律相談のお問い合わせは、こちらからどうぞ。
 法律相談のお問い合わせは、こちらからどうぞ。

 

 

エータ法律事務所では、中小企業の皆様を救済・支援するため、日々積極的に取り組んでおります。